『日本古典籍書誌学辞典』執筆項目
高 木  元 

扉題とびらだい
内題のうちのひとつで、前表紙の裏に対向する「扉」つまり巻頭に書誌事項の記述のために取られた1丁の表側に記された書名のこと。そもそも「扉」は唐本の「封面」を摸したものといわれているが、これは洋装本でいうところのタイトルページ(標題紙)に相当する場所である。この「扉」は、近世中期以降の板本では次第に前表紙裏に貼付けられた「見返」へと変化していくが、時には「見返題」をも包括して「扉題」と称する場合がある。

扉書とびらがき
前表紙の裏に対向する「扉」、つまり巻頭に設けられた第1丁目の表側に表記された書名(扉題)・編著者名・蔵板書肆名や刊年など、主として書誌事項を示す文字列のこと。「扉」とは洋装本でいうところのタイトルページ(標題紙)に相当する場所である。また、とくに絵や意匠が施されたものを「絵扉」(扉絵)という。一般に唐本の「封面」に倣って巻頭の1丁表に摺られているものであるが、次第に裏側に摺られて前表紙裏に貼付けられた「見返」が主流となっていった。
【参考文献】中野三敏『書誌学談義 江戸の板本』岩波書店、1995年。

序題じょだい
序文の冒頭(序首)に記された書名のこと。外題や内題と異なる場合も多い。また、1つの書物に漢文の序と和文の序、あるいは「他序」と「自序」など複数の序文が備わる場合もあり、それぞれの序文に題が付されていることもある。また、書名などを付さずに単に「序」「叙」などと記されていることや、関防印のみ捺されている場合、さらに序題を持たずに、いきなり序文が始められることもある。

凡例題はんれいだい
その本が出板されるに至るまでの経緯や、全体の内容や構成などについて述べられた「凡例」の冒頭に記された書名のこと。一般には「序」と本文との間に付されることが多く、外題や内題とは異なることがある。時には、書名の記述を伴わないで単に「凡例」または「例言」「再識」などと記される。

目録題もくろくだい
目録の冒頭に記された書名のこと。目録(目次)の様式はジャンルごとに異なり、目録題の付け方や、その様式(意匠)自体がジャンルの特性を顕在化している。逆にいえば、目録の体裁自体が、装幀とともに、その本が造本される際して意識されたジャンルを知る有力な手掛かりにもなる。なお、題名の記述がなく、単に「目録」とだけ記される場合もある。

巻首題かんしゅだい
本文の冒頭に記された書名のこと。時には、各巻の冒頭に記された書名を指す場合もある。巻頭書名・巻頭表題・首題ともいい、内題を代表するものとして扱われる。1タイトルが数巻に及ぶ場合には、巻ごとに異なる表記で記されたり、2巻目以降に略称を用いたものも見受けられる。従来は書物の正式題名として採用されることが多かったが、近年は外題を正式書名として採る立場が増えてきた。ただし、草双紙や往来物のように、いきなり本文が始まり巻首題を持たないジャンルもあるので、一概には決められない。なお、巻首題の下には編著者名を伴うこともある。

尾題びだい
編や巻の本文の最後に記された書名のこと。奥題・巻末書名ともいい、巻首題に対応するものであるが、必ずしも巻首題と同一ではなく、むしろ省略された題名の場合が多い。また、最終巻(編末)の尾題の下には「終」「畢」「大尾」などと、そこでテキストが終りであることを明示したものもある。

奥題おくだい
編や巻の本文末尾に記された書名のこと。尾題・巻末書名ともいう。

小口書こぐちがき
書物を本棚に横積みした時に検索しやすくするという蔵書整理の都合で、所蔵者が下小口に墨書した略書名や巻数などのこと。したがって、本の出来成立に係わった側の意識の反映ではなく、所有者が後から付したものである。しかしそれゆえに、享受された時点における略呼称や、巻数や冊数を知るための参考になる。なお、洋装本では背の反対側を小口と呼び、辞書のインデックスなどを除いて、普通そこに文字が書かれることはない。

背書せがき
書背に記された書名や叢書名・編著者名・板元名などのこと。背文字ともいう。明治中期以降の洋装活字本に印刷または箔押されている背文字は、書物の発行時に施されたものと思われるが、それ以前のボール表紙本などや和装本には背書がないのが普通。もし、何か記されている場合は、所有者が後から書き加えたものと考えられる。和装活字本の中でもやや厚手の書物は、洋装本と同様に立てて書棚に置かれることもあり、その場合には小口書ではなく背書された。また、書名などを記した紙(題簽)を貼付ける場合もあった。

前附まえづけ
本文より前に位置するすべての文章絵図などのこと。具体的には見返・題詞・序文・凡例・目録・繍像口絵などを指していう。丁付を本文とは別扱いにして「序」「目」としたり、数丁に及ぶ場合には「口ノ一、二」などと別立ての数字を加える場合もある。

後附あとづけ
本文の後に位置するすべての文章絵図などのこと。跋文・索引・奥付・広告・刊記などを指していう。丁付を「跋」などとして、本文とは別扱いにする場合もある。

題字だいじ
書物の巻首に、その本の編著者や内容を称賛して染筆した短い文言を大きく掲げたもの。編著者から依頼を受けた名士や先輩などが揮毫した墨蹟をそのまま板下にして飾枠の中に板刻したものが多い。凝った篆刻を施した関防印や印記を備えていて、はなはだ雅趣に富んだものである。本来は肉筆の写本に見られたものであるが、板本の場合だと、とくに手跡を残すという意味が色濃く、書画帖や詩文集などによく見掛けるが、後期の戯作類にも備えているものがある。

じょ
書物を著作編纂するに至った事情や出板の次第を記した文章で、一般に本文の前に位置する。序文・はしがき・前序・序跋ともいう。有名人や先輩などが書いた「他序」と、編著者が自分で書いた「自序」とがある。古く中国に於いては本文の後に付したものであった。本文を書上げた後に執筆するのが一般的であったからだという。わが国の近世期板本には、草双紙など片々たる冊子に至るまで序文が備わっている。この序文という形式そのものが、立派な書物としての雰囲気を持っているので、戯作などでは茶化されて戯文調の内容を持つものも出てくる。吉原細見の序などはその良い例である。
さて、序文には序者の筆跡をそのまま板刻したもの(自筆刻)や、著名な書家に頼んで書いて貰ったものがある。それらは、書物の巻頭を飾るという装飾的な意味合いから、飾枠に彩られたり、あえて厚手の奉書に摺られたり、時には色摺が施されたりして、はなはだ意匠が凝らされることが多い。形式的には序末に年記と序者署名や印記とを備えたものが多く、時に書写した書家の署名や印記を持つものもある。これらの署名や印記は、著編者名が記されていなかったり、未知の戯号である場合、著者名を知る手掛かりになることがある。

いん
本来は唐代以降に見られる序の濫觴と成った文体のことだが、序文と同じ意味で用いられる。引言・小引ともいう。
【参考資料】川瀬一馬『日本書誌学用語辞典』雄松堂出版、1982年。

原序げんじょ
唐本の和刻本や経書の注釈書、また旧板の覆刻本などの場合、その新たな出板に際して加えられた序文以外の、原本に最初から付されていた序文のこと。また、後から添えた序に対して、もとから存した序のことを指す。一般に、原序の方が後方に位置していることが多い。

初序しょじょ
版や摺りを重ねて行く場合、最初に著作した際に添えた序のこと。後にこれを除いたり改めたり、別の序を加えたりする場合もある。

自序じじょ
書物の編著者が自らしたためた序のこと。板本の場合は自筆刻と呼ばれ、編著者の筆跡をそのまま板下にして彫る場合が多い。また、時には著名な書家に頼んで書いてもらうこともあった。

他序たじょ
編著者以外の人が記した序。師匠や先輩や著名な人に依頼して書いてもらうことが多かった。場合によっては板元の斡旋などで、直接は著編者を知らない人が書くこともあった。自序と一緒に掲載される場合は、他序が前方に位置するのが普通であった。

緒論しょろん
本論に入る発端の議論をいう。論説の糸口、または論評を加えた序文のことで、序言・序論・緒言などともいう。本来は序文には議論を含まなかったが、後年になって次第に序自体の数も増え、同時に性質も変化してきた。

緒言しょげん
序と同類であるが、書物の凡例などの内容や梗概を含んだり、著述の動機などが記される場合がある。論説の糸口。序言・序論・はしがき・前書・前置き・緒論・導言(イントロダクション)などともいう。
【参考資料】植村長三郎『書誌學辭典』教育図書株式会社、1942年。

題辞だいじ
編著者以外の名士が、その書の讃評など内容にふさわしい短い文や詩句を書いたもの。筆跡を遺して巻首に掲げる。題詞・題言ともいう。

開題かいだい
書物の初めに記す言葉。前書ともいう。また、経典の解説を意味する場合もあるが、こちらは書物についての解説を示す「解題」と同様の意味で用いられることがある。

凡例はんれい
序文と目次の間に位置し、本文の表記の次第などを説明した文。その本を読む上で参考になる事項を箇条書きにしたもの。例言・汎例・発凡・導言ともいう。

目録もくろく
目・目次と同じ。内容を表示した記載を書き並べたもの。ジャンルによって書式は異なり、見出し程度の短いものから、内容の要約まで含む長いもの、また対句形式にしたものなどがあり、また意匠や文字配置に凝った体裁を備えるものなど様々である。著編全体を記したものは総目・総目録ともいう。

ばつ
編著の次第などを巻末に付記する文章。跋語・跋文・後跋・書後・後序・後書などともいう。編著者が自ら執筆した跋を「自跋」といい、編著者以外の友人や弟子などが執筆した跋を「他跋」と呼ぶ。これらも序と同様に執筆者の筆跡を板下としたものが多い。

後序こうじょ
跋に同じ。跋語・跋文・後跋・書後・後書ともいう。

後書あとがき
書物の巻末に書き付ける文章。跋文。また、奥書と同意にも用いる。また、すべて後から書き加えられたものをいう場合もある。

自跋じばつ
編著者が自ら執筆した跋文のこと。時に編著者が別号で書いている場合もあるが、跋者と著編者との同定ができれば自跋ということになる。

他跋たばつ
編著者以外の友人や弟子などが執筆した跋文のこと。

切附本きりつけぼん
中本型読本の末期に位置付けられる小冊子。切附本という呼称は、綴代の反対側を折って残りの三方を裁った「切付表紙」を持つことに由来し、広告などに「切附類品々・武者切附本品々」という用例が見られる。合巻風摺付表紙に読本風の本文という様式を持つが体裁には揺れが見られ、文字題簽を持つ「袋入本」もある。弘化期以後、安政期を中心に明治初年にかけて、およそ二百種ほど出板された。多くは「読切」を標榜するが「続物」もある。内容的には講談に近く軍談や一代記物が多く、また実録や読本の抄録なども目に付く。鈍亭(仮名垣)魯文などを主たる作者として粗製濫造された廉価な大衆小説ではあるが、明治期の草双紙の板面を先取りしたもので、実録体小説や軍談の普及を担った一ジャンルである。
【参考文献】高木元「末期の中本型読本」「切附本書目年表稿」『江戸読本の研究』ぺりかん社、1995年。

摺付表紙すりつけひょうし
一般に草双紙のうち合巻の表紙全面に美麗な錦絵を摺出したものを指すが、草双紙以外にも見られる。草双紙が合巻体裁を主流とするようになった文化4年以降、黄表紙から引継いだ簡単な板彩色の絵題簽を貼った表紙は、多数の色板を用いて重摺りが施された錦絵風摺付表紙へと変化した。文化6年の合巻を端緒として年を追うごとに次第に凝った意匠を競って一層華やかさをましていく。最初は4巻2冊の左右2図の続いた図柄であったが、後には迫力ある表紙絵を意図して6巻3冊の3枚続きの図柄になる。さらに折返すと別の図になる仕掛け表紙や、『北雪美談時代鏡』のように48編に亙って連綿と続く絵柄を用いたものも出てくる。なお摺付表紙は、表紙の天地と左を折り込み右を裁ち切った上で見返の紙を貼るという手数を省くために発生したと考えられている。
【参考文献】鈴木重三「近世小説の造本美術とその性格」『絵本と浮世絵』美術出版社、1979年。

絵題簽えだいせん
題簽に書名などのほかに絵が加えられたもの。絵外題ともいう。近世の仮名絵入小説に用いられているものが多い。草双紙の赤本・黒本・青本・黄表紙・初期の合巻、また一部の江戸読本などに見られるような、内容に関係のある図柄や人物などを描いた大型の摺り題簽が一般的なものである。最初は墨一色であったが、次第に多色摺りを施したものが多くなった。また、書名を記した短冊型文字題簽に加えて絵だけを摺った小振りの題簽が添えられたものや、凝った意匠で目録を図案化した副題簽を持つものもある。ただし、このような華やかな装幀は一般に初板初摺の時に付されるもので、後摺時や改題時には省かれてしまったり、素っ気ない文字題簽に変えられてしまうことが多い。
【参考文献】浜田義一郎『書誌書目シリーズ8・板元別年代順黄表紙絵題簽集』ゆまに書房、1979年。

書名しょめい
書物の名称。図書の内容を象徴する名詞をもって書名とすることが多く、時には副題や別名を持つ。題号・題名ともいう。書名は表記される個所、表紙・題簽・見返・扉・巻頭・序跋・巻末・奥付・小口・背・柱などによって異なるのが普通。柱題は板元が製本の便宜のために略名を付し、小口題は所蔵者が整理のために書付けたもの。一般的には著者の意図が反映している巻頭題をもって正式書名としているが、とくに書物の顔である表紙に記されている外題・表題・標題・題目とも呼ばれる書名を正式書名とする立場もある。しかし題簽を欠いていたり、表題に略称が用いられたり、板元が勝手に変更する場合も多く、現実的には採用しにくい。なお国文学研究資料館では統一書名という概念を導入し、データ処理上不可欠な異名同書の名寄せをしている。

副題ふくだい
サブ・タイトルのこと。副書名ともいう。主たる書名に対して付随的に用いるもので、書物の内容を補足説明するものが多い。営業上の理由から敢えて刺激的な惹句を副題として付す場合もある。時には、別名や一名として添えられた書名が、機能的にはこの副題に相当することがある。たとえば西鶴の浮世草子『諸艶大鑑』(貞享元年)の内題と外題とに「好色二代男」と添えられているのがその例である。また十返舎一九の中本型読本『遠のしら波』(文政5年)などは角書である「一本駄右衛門東海横行記」が副題相当の機能を持っているとも考えられる。

角書つのがき
書名の上に添えられたもので、冠称と呼ばれるもののひとつ。具体的には〈新版|絵入〉や〈復讐|奇談〉〈三七全伝|第二編〉などという具合に、形態や内容に関する補足的な説明を付す。また副題的に用いられているものもある。この角書は絵入狂言本や浄瑠璃本に見られるものに影響を受けて、〈おなつ|清十郎〉や〈於牟女|粂介伝〉のように、その作品の依拠する演劇の世界を一対の登場人物名で示す場合も多い。とりわけ割書という性格から〈父漢土ちゝはもろこし母和朝はゝはにつほん〉のように、対句的な表現が目に付くが、場合によっては1行に書かれたり、時には3行書きにされることもある。なお角書は必ずしも外題や内題などに付されているとは限らず、見返題や序題だけに見られたり、草双紙などでは巻末広告にだけしか付されていないこともある。

小題しょうだい
主として漢籍に関する用語で、書物の中にある巻・章・節・類別の題名のことをいう。書物の総称、すなわち一般にいう書名のことを「大題」または「大名」というのに対し、その下位に分類された部分の名称を「小題」または「小名」と呼ぶ。ふつうの本では『史記』「列伝」という具合に、上に「大題」下に「小題」が置かれているが、宋本の中には逆に「小題」が上で「大題」が下に置かれたものもある。

外題げだい
書物の表紙に記載されている書名のこと。表題・標題・題目ともいう。直接表紙に記された「打付外題」と、題簽に書名が記された「貼外題」との2種類がある。のうち墨書された題簽を「書題簽」というが、一般こに板本の大部分には印刷された「摺題簽」が用いられている。題簽には短冊型と方型のものとがあり、多くは外周に子持枠などの線が施される。漢籍の伝統を踏まえた書物は表紙の左肩に、物語の系統を継ぐものには中央に貼られることが多い。枠の中には書名や巻数などが摺られるが、2冊以上の場合には字体を楷書から行草書へと次第に崩すことがある。凝った例としては芝居絵本や浄瑠璃本などがあり、巾広の短冊簽に絵や板元名・座元名などを入れたりした。これに影響を受けた草双紙では絵入の大きな「絵題簽」が使われるようになる。また目録などを記した「副題簽」を加える場合もある。しかし題簽は時の経過とともに糊が利かなくなり剥がれやすくなるので、時代を上るほど残存しているものは少ない。とりわけ初期の草双紙などは題簽以外に何一つ書誌事項が記されていないので、題簽が残存しているものは資料価値も高い。ただし後から別本の題簽が貼られたものも存在するので、外題に加えられた改変には注意を要する。
【参考資料】長沢規矩也『図解古書目録法』汲古書院、1974年。中野三敏『書誌学談義 江戸の板本』岩波書店、1995年。

添外題そえげだい
書名や巻数が記された主たる題簽の他に、絵を描いたり内容目録などを記したりして添付された題簽のこと。草双紙などには絵題簽が「添外題」として使われ、また、節用集や往来物、類書などで目次を横形の紙に摺って添えられたものを、とくに「目録外題」または「目録題簽」と呼んでいる。これら「添外題」のことを、時には「副外題」ともいっているが、厳密にいえば「副題簽」がふさわしい。まれに「添題簽」と呼ぶ場合もあるようだ。一般に「題簽」は「外題」の下位概念であるが、板本に関する限り大部分の本に「題簽」が用いられているから、「添題簽」といった方が限定的で分かりやすいだろう。

内題ないだい
「外題」に対し、書物内部の各所に記された書名のこと。具体的には記されている場所を冠して「見返題」「扉題」「序題」「凡例題」「目録題」「巻首題」「尾題」などと呼ばれているが、狭義には各巻の本文冒頭に示された巻頭書名をさして「内題」と呼ぶ場合が多い。なお古写本は「内題」を持たないものが多く、一方板本には「内題」が備わるのが普通。ところで、著編者が決めたと思われる「内題」と、時に板元の営業上の希望によって付けられたと思しき「外題」との間に不一致が生ずることがある。一般には「内題」をもって書名とする場合が多いが、じつはその「内題」の間ですら不統一である場合も珍しくない。単純に一部分が省略されている場合や、「尾題」に「畢」や「大尾」などと付されている場合はともかくとして、大きく違う場合はどれを取って書名とすべきか困惑することもある。一般に慣用されている書名に従うにしても、大きく違う場合は併記しておく必要があるだろう。また漢籍の「内題」の場合では『論語』など一般的呼称に過ぎて同名異書と区別できない場合もあり、その際は別の箇所の記述から補って『論語〔集解)』などとする操作も必要となる。
【参考資料】長沢規矩也『図解古書目録法』汲古書院、1974年。中野三敏『書誌学談義 江戸の板本』岩波書店、1995年。

見返題みかえしだい
前表紙裏側の見返に記された書名のこと。写本の見返には何も書かれていない紙が貼られたものが多い。一般に板本の見返に書名などの書誌事項が摺られるようになるのは享保過ぎころからで、唐本趣味の反映と考えられている。すなわち唐本の「封面」半丁を見返に張り付けたものに倣い、漢籍類に始まり次第に国書に広がったのである。また見返の意匠も単純な枠から飾り枠へ、さらには重摺りを施した絵が添えられるなどと、時代が下がるほど凝ったものに変化した。なかには袋に用いた板木を使って見返を摺ったものも見受ける。なお、草双紙合巻などでは本文冒頭に内題を持たないものが多く、見返題を正式な書名として採るのが普通である。


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